産婦人科に着くと、先生が入口の明かりをつけて待っていました。すでに手術着を着ていて、すぐにでも処置を行えるようにしてくれていたようです。

病院の明かりを見た時、本当にありがたいなと思いました。

「とにかく診察しますから、入って!」
と、先生に言われるままにいつもの診察台へ。

超音波検査で子宮の状態を診ながら、先生は
「だいぶ(胎嚢が)降りて来ているけど、まだ時間かかりそうですね。すでにかなり出血しているようですし、すぐ処置して出してしまう事をお勧めします。」
「数時間前に食事をされているので、全身麻酔は出来ません。局所麻酔で手術を行います。」
とのこと。

(処置って、掻爬手術の事…?
本来なら前日から絶食して、前処置して全身麻酔してからする処置を、今からすぐ…?)
そんなの絶対痛いし、このボロボロの体力で手術を耐えきれるか…?!コワイ!めっちゃコワイ!!!

ギリギリの状況で、判断能力が鈍っていた私

藁をも掴む思いで、
「このまま自然流産するのを待つのは無理でしょうか」
と聞くと、
「出てきそうな気配もあるけど、いつ出てくるか分からないよ。これ以上出血すると輸血が必要になるかもしれないし、そうなったら他の病院に搬送しないと処置できない。あなたの命に関わる事だから、すぐ手術したほうがいいよ。」

ああ〜…やっぱりダメか…と思いつつ、胎嚢は子宮口のだいぶ近くまで降りてきているし、もう少し待ってたら自然に出るかもしれない、もともと掻爬手術を受けること自体に抵抗もあるし、なんとかこのまま自然に出せないだろうか、でも先生すでに手術着着てるし、これ以上血が出ると危ないらしいし、でもやっぱり手術怖い!!

今思うと、この時点で覚悟して緊急手術を受けた方がよかったのでは…とも思います。しかし、この時はとにかく手術が怖かった…!
お恥ずかしい話ですが、半べそで先生に
「もう少し待たせてください…あと少し待って、自然に出てこなかったら手術します!」
とお願いしました。

先生はしょうがないなあ〜という顔で
「じゃあ、ベッドで横になってもらって、しばらく様子を見ましょう。1時間後にまた診察しますので、そこでまだ時間がかかりそうだったら手術しましょう」
と妥協してくれました。
案内された部屋でベッドに横たわり、ひたすら(早く出てきてくれ…)と祈る私。

先生が様子を見にきてくれるまでの1時間、出血の勢いはおさまらず、むしろ勢いをましていました。最後の仕上げ!とばかりに血が出てくる…
途中、トイレを借りてナプキンを変えようとした時、ドドドっとまた大量の血のカタマリが出る感覚がありました。

また失神しかけました

なんとか気をもたせ四つん這いで病室に戻り、夫の手を借りてベッドに横たわりました。呼吸は浅く、手足は氷のように冷たくなり、話すこともままならない状態に…
(これはもうマジで体力が持たない・・・!!)
(先生が来たらすぐ手術してもらうようお願いしよう・・・!痛いとか怖いとか言ってる場合じゃない・・・!)
と思っていたところにちょうど先生が様子を見に来てくれました。

ちょっと先生焦ってた

という訳で2度目の診察。
もうこのまま手術してもらおうと覚悟を決めて診察台に座りました。
20:45、出血が始まってから、4時間近く経過していました。

もうしのごの言ってられない状態

カーテンの向こうで先生が何か器具を入れたとたん、
「あっ!もう出てきてるよ!」
と声をあげました。

先生は「ちょっと待ってねー」と言いながら何か器具を使って処置してくれている様子。カーテン越しなので何をしているかわからなかったのですが、後日聞いたところ、子宮口に引っかかっていた胎嚢を鉗子を使って引っ張り出したそうです。
そして・・・

ぬるすぽんっ!

という感覚がして

急に気分がラクになりました。
妊娠してからずーっと感じていた、つわり中のあのモヤモヤした気持ち悪さが取れた感覚が!

よろよろと診察台を降り、血だらけのズボンをはき直して椅子に座ると、カーテンの隙間から先生が取り出した血のカタマリから胎嚢を摘出している姿が見えました。






そして私の目の前に摘出した胎嚢が!




思ってたよりでっけえ!
最後の検診時、超音波検診の写真では直径が19.4mmとあったので、「直径2㎝くらいのカタマリでしょ?余裕で出てくるんじゃない?」と甘く見ていたけど、実際は直径2cmの胎嚢のまわりを絨毛膜という細胞が包んでいて、ゴルフボールくらいの大きさでした。

普通の自然流産の場合、トイレに流してしまう事が多いため、ここまで完全な形で出てきたものを目の前で見れるのは珍しいんじゃないでしょうか。
夫も診察室に呼んでもらい、二人でその姿を見る事ができました。
しかしなにせ私も夫も放心状態で、「ああ私たちの子…!」とか、そういうしんみりした雰囲気にはなりませんでした。

妙な空気

なんにせよ、胎嚢さえ出てしまえば、もうひどく出血することはないらしく一安心だそうです。

痛み止めと子宮収縮のお薬を出してもらい、今後の対応など、先生の話を聞いていたのですが、私は貧血のせいが気分が悪くなり、テーブルに突っ伏してしまいました。

もういろいろ限界でした

先生が「気分が良くなるまでベッドで休んでいていい」と言ってくれたので、お言葉に甘えて病室で休ませてもらうことに。

タクシーを呼んでもらって、先生にお礼を言い自宅マンションに着いたのは21:30。玄関に着くまでに貧血で座り込んでしまったりしながらも、夫の手を借りて、なんとか帰宅しました。疲れた…!!!!!

本当にありがとう良い夫…!

そんなこんなで、麻酔なしで先生に自然排出の仕上げをしてもらった形で、私は無事流産できたのでした。

それにしても、壮絶な経験だった…!
今でも、当時を思い出しては背筋がゾッとします。
この後、1週間ほど重度の貧血で寝込むことになりました…。

後日の検診時、先生に「ここまで出血するのも珍しい」と言われました。
なんとなく、「自然流産は手術より母体に優しい」イメージを持っていましたが、その考えは危険です。手術で摘出してもらった方が安全な場合もあると思います。
私はギリギリで先生に手伝ってもらったから助かりましたが、もし先生に見てもらわず、あのまま自宅で出血していたらと思うと、ゾッとします。

本当に、今ここで生きているのはいろんな人のおかげなんだな、と思います。ありがたい。